パニック障害
パニック障害はどんな病気?
発作が持続する時間は短く、少し安静にすれば治まることが多いですが、時間や場所に関係なく突発的に発作が起きるため、「今度はいつ発作が起きるのかわからなくて怖い」という不安が常につきまとうようになります。これを「予期不安」と言います。
予期不安が強くなるとさらなる不安を呼び、バスや電車の中などすぐに助けを求められない場所を避けるようになる、人混みに行かなくなる、外出する回数が減るなどといった負の連鎖が起こってしまうことがあります。これを「広場恐怖」と言います。このような症状によって、日常生活に支障が起きている状態のことをパニック障害と呼びます。
パニック障害の症状は?
パニック障害が起こるメカニズムについては、まだ十分に解明されていませんが、脳内の大脳辺縁系と呼ばれる場所でセロトニンという物質を分泌する調整機能が、何らかの原因によりうまく働かなくなっている可能性が指摘されています。また、強いストレスや過労、遺伝的要因(血縁者にパニック発作の患者様がいる)などによっても引き起こされると考えられています。
- 突然意識を失うような恐怖
- このまま死んでしまうかもしれない恐怖
- 発作がまた起きるのではないかという不安
- 発作が起きた場所に行くことが怖い など
- 突然息が苦しくなる
- ドキドキと動悸がする
- 息を吸いづらい
- めまい、吐き気、頭痛がする
- 手足や全身がしびれる
- 冷や汗が出る
- 体がふるえる
- 胸のあたりの痛みや違和感
- 首や肩の筋肉がこる など
- 満員電車の中で突然息苦しくなった。
- 混雑している駅の近くで動悸やめまいが現れた。
- 映画館や会議室などすぐに外に出られない場所で急にドキドキして呼吸しづらくなった。
- 歯医者で治療中に息苦しくなった。歯医者に行くことが怖くなった。
- 高速道路を自動車で移動中に息苦しくなった。
- 発作が起きるのではないかと不安で飛行機に乗れない。
パニック障害の治療法は?
パニック障害の主な治療法は、薬物療法と薬を使わない治療(認知行動療法や段階的曝露療法)です。
薬物療法では、抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬 SSRI)や抗不安薬を処方します。SSRIにはパニック障害による脳内セロトニンの減少を抑える作用があります。SSRIの主な副作用には、消化器症状(吐き気・下痢・便秘など)、精神神経症状(めまい・ふらつきなど)、性機能障害(頻度はまれ)、セロトニン症候群(不安やイライラ。頻度は非常にまれ)があります。SSRIを含む抗うつ薬で治療する際には、症状に応じて少しずつ薬の量を調節する必要があります。また、症状が改善してすぐに服薬を中止すると再発しやすいという報告があります。「調子が良くなったからもう薬を飲まなくていい」「薬に頼りたくないので服薬を中止しよう」などとご自身の判断で服薬を中止することは絶対にしないでください。
ベンゾジアゼピン抗不安薬は、脳の興奮を抑えることで、不安、緊張、不眠などの症状を緩和する薬です。脳内のGABAという物質の働きを強めることで、パニック障害などの不安症状を改善します。ベンゾジアゼピン抗不安薬の副作用には、精神神経症状(眠気・ふらつきなど)、消化器症状(吐き気・口の渇き・便秘など)、依存症状などがあります。医師の指示に従って薬を服用するようにしてください。
薬を使わない治療には、主に認知行動療法と段階的曝露療法があります。これから治療を始める状態では、日常生活に支障が生じるくらい不安や緊張が強まっていることが多く、薬物療法と併行して認知行動療法や段階的曝露療法が行われることが多いです。
段階的曝露療法は、パニック発作が起こりやすい場所で家族や信頼できる人に同伴してもらうことで、少しずつストレスに慣らしていきます。うまくできたという成功体験を積み重ねることで、次第に不安や緊張が軽減されていき、最終的には原因のシチュエーションに遭遇しても問題なく対処することができるようになります。認知行動療法には、考え方の癖に気づくなどして気持ちを楽にさせ、不安や緊張を軽減させる効果が期待できます。